くず鉄作りの海 - スティール・ボール・ラン感想ログ(2006/05〜08)

2006/8/27


スティール・ボール・ラン感想(#17 敵はどいつだ?)

「チーズの歌」
作詞・作曲:ジャイロ・ツェペリ

(1番)
ピザ・モッツァレラ ピザ・モッツァレラ
レラレラレラレラ
レラレラレラレラ
レラレラレラレラ
ピザ・モッツァレラ ピザ・モッツァレラ

(2番)
ゴルゴン・ゾーラ ゴルゴン・ゾーラ
ゾラゾラゾラゾラ
ゾラゾラゾラゾラ
ゴルゴン・ゾーラ ゴルゴン・ゾーラ

「こんな時、どんな顔をしたらいいのか分からない」、そんな気持ちになりそうなジャイロの歌。しかしそれをジャイロに「聴きたいのかよ?聴きたくねーのかよ?」と言われて、嫌な顔をしながらもちゃんと聴いてあげているジョニィも友達思いのいい奴です。
1st. STAGE、2nd. STAGEの頃のジャイロだったら絶対にこんなことはしなかったでしょうが、これもおそらくジャイロがそれだけジョニィと打ち解けてきた証なのかもしれません。以前はジョニィが偶然ジャイロの荷物の中身を見そうになっただけで怒っていたのに、今となってはジャイロはジョニィに自分の素性も明かしていますし、ヴァチカンからの手紙も包み隠さずジョニィに見せるようにまでなっています。
そんな風にジャイロがジョニィとの距離を縮め、思いついた「シ・トゥ・レイしました」の一発ギャグやオリジナルソングを披露する一方、そんなものをマンツーマンで見せられたジョニィの反応はその言葉とは裏腹に非常に冷たいように見えます。どうもジャイロが親しく余計な真似をすればするだけジョニィの方はBダッシュでジャイロとの距離を引き離しているように見えます。あの厳格なジャイロのお父様が今の息子の姿を見たらいったいどう思うことか。


ジョニィの無表情が怖い


チームプレイでジャイロとジョニィを襲う、Dioと、そして未だ謎の敵スタンド使い。プライドの高いDioがチームを組んでいることに驚いているジャイロですが、ちょうどこの後の『天上天下』でも「チーム」という言葉が出て来ており、今頃Dioも、「思えばオレは、己一個の力を過信しすぎていたのかもしれんな……オレをこれほどまで”強く”したのは、貴様等自身だ」と言っているかもしれません。
ところで、5th. STAGEでは馬を休めなければいけないと言っていたDioなので、Dioの方はおそらく後続グループにいてジャイロたちからは離れたところにいるはずです。しかしDioのスケアリーモンスターの能力は効力は有効なようで、「恐竜化」についてはかなり射程距離の広い能力のようです。

そして敵スタンドの「道具」に使われたドット・ハーン。『SBR』の第一話から登場し、優勝候補の一角としていつジャイロやジョニィ達とのやり合うことになるかと期待されていた彼でしたが……
バ…バカな…か…簡単すぎる…あっけなさすぎる
あまりにもあっけない、どころか、無惨な彼の最期。レース開始数分でサボテンに激突してリタイアになったアヴドゥルとどっちが哀れな末路であったかはわかりませんが。

鉄球を失ったジャイロと、爪弾の能力に不安を抱くジョニィ。ジャイロとジョニィの二人がかりのチームプレイでも退けるのがやっとだったDioが、今度はチームプレイで攻撃、さらにはパートナーのジャイロは武器である鉄球をなくしています。ジョニィ一人の「能力」でこの窮地を切り抜けなければなりません。「爪弾」の能力だけでは勝てそうにないと独白するジョニィ、ここで気になっていた二つ目の遺体を手に入れた能力が発揮されるのでしょうか。


2006/7/28


スティール・ボール・ラン感想(#16 ルーシーの決意)

4th. STAGEの着順が確定。そして4th. STAGEを制したのは、登場以前からその名前で我々にある種の期待を抱かせていた男、「ノリスケ・ヒガシカタ」でした。
ノリスケ・ヒガシカタといえば、漢字で書くと「東方乗助」となり、ジョジョ四部の「東方仗助」を連想させる名前でもあります。無論、作者自身もある程度狙ってのことでしょうが、Dioを初めウルムド・アヴドゥルやF・V・シュトロハイムなど、過去のジョジョシリーズの転生キャラクターが度々登場しているこの『SBR』において、あのサザエさんみたいな特徴的なヘアースタイルの仗助がどのようなキャラクターとなって登場するのか気になるところでした。
そして実際に登場したノリスケ・ヒガシカタはどんな人物かというと……こいつは予想外でした。いや、むしろこれを予想しろと言う方が無理。
特徴的なヘアースタイルどころかヘアーとお別れして久しいおじいちゃんでした。クレイジーダイヤモンドの能力でも死んでしまった毛根を直すことはできなかったのでしょう。
このノリスケ・ヒガシカタ、物腰は穏やかですが、ホット・パンツに皮肉を言ったり、ついでに彼女の本当の性別まで察知したうえにさりげなくセクハラ行為にまで及ぶしたたかな男です。東方仗助とはもうまったくの別人と言っていいキャラクターです。「もうジョウスケは帰って来ん。今いるわしは、ノリスケ・ヒガシカタでしかない」といったところでしょうか。
しかし、ノリスケおじいちゃん、よくホット・パンツの性別がわかりましたね。一時的に行動を共にしたジョニィでさえ、偶然ホット・パンツの胸に触るという、転校初日にトーストをくわえた女の子と道端でぶつかるのと同じくらいにトラディショナルな行為を通してやっと知ったというのに。服を着た上からでもホット・パンツの体つきをしっかり見て取っていて、「長さといい、細さといい、足首の締り具合………最高じゃ」ということで女性と判断したのでしょうか。それとも何か臭いを嗅いでいたので、墳上裕也のように猟犬並みの嗅覚でもあるんでしょうか。

さて一方のジョニィとジャイロ、二人ともまだ総合ポイントでこそ上位陣にはいますが、4th. STAGEまで来ていまだ1位のボーナスポイントを獲得できていないのは痛いかもしれません。特になかなか1位との差が詰められないジャイロとしては焦るのも仕方のないことといえます。
ところで、一時は彼女の方からジョニィたちを「それならオレの方は君らを信用する。君らは悪い人間じゃあ ないからな」とまで言っていたホット・パンツのジャイロたちに対する態度が、「フンッ」を鼻を鳴らすだけだったのは、やはり果樹園に置き去りにされたことを根に持ってのことなんでしょうかね。さらにはジャイロからは携帯していたローストビーフサンドの肉だけを盗んでいくという地味な嫌がらせを受けているかもしれないので、戦いを共にした彼らの関係が険悪なものに変わっている可能性もあります。

そして4th. STAGE、大きく遅れて到着したのがディエゴ・ブランドーです。ジャイロとのレースでかなり馬に無理がたたっていたらしく、自分の手で引いて歩いてのゴールインでした。このようにダメージを受けた状態ではDioの愛馬もカクカクした動きでしか走れないのでしょう。

遺体の脊椎が示した次の遺体のポイントは三カ所。そしてもう用済みとばかりにルーシーを帰そうとするジャイロ。しかしルーシーが危険を冒して彼らの所に向かったのは彼らの助けを借りるため、そこでさよならというわけにはいきません。そしてルーシーは言います。
「あたしがあなた方にお願いしているのは、あたしの「夫」を大統領から救い出してやつらの来ないどこか遠くの国へ逃がして欲しいという事ッ!」
そもそもの彼女が今回の危険を冒した動機からにしてもそうですが、この考えは行き当たりばったりの考えです。レースの優勝を狙うジャイロたちにそのような援助を期待するのも無茶な話ですし、ジャイロの言うように国外へ逃げた後のことを何も考えていません。なによりプロモーターとして波乱の人生を送ってきたスティーブンがそのような「逃げる」生き方に納得するとも思えません。
しかしジャイロも、ただルーシーを放り出そうというのではありませんでした。ルーシーが助かる道は一つ、「大統領に近づき…その『心臓部』をヤツから盗み取れッ!」と言います。共闘する形でなら彼女を助けてやることもできるということでしょう。遺体を奪うための手段としてルーシーに遺体の眼球を渡すジャイロ。非常に危険な賭ですが、ルーシーもついに心を決め、「いい眼球だな、少し借りるぞ」とばかりに遺体の眼球を受け取ります。

そしてルーシーがジャイロたちと接触を持つ一方、あの男、ディエゴ・ブランドーも大統領と接触を持とうとします。ジャイロたちと同様、すでにおおまかな事情を把握しているDioは大統領との取引を持ちかけます。しかし使者の男も慎重です。Dioが目の前で遺体の眼球まで見せたうえでもまだ「「遺体」とは何の事かな?」ととぼけようとします。きっと大統領から「しゃべりすぎは命に関わるぞ」ときつく念を押されているのでしょう。でもあんた、遺体の眼球を見るなり何も言わずにDioから取り上げようとしてたよね。
お互いに腹の底には一物あるものの、Dioと大統領との取引が成立。しかしDioも、大統領に気に入られたければもっと親密な関係になれるように接するべきなのに。いつだったかやっていたように、馬の曲芸乗りを披露したり、お得意のオヤジギャグで笑いを取って好印象を獲得するとか。
しかしまあ、これがツンデレ作戦であれば、第一印象を悪くするのも効果的と言えます。
Dioの部下として現れたスタンド使いの男(女)、まだ姿がシルエットのままで隠されていますが、話の流れからするとノリスケ・ヒガシカタの可能性が高いです。しかし、ここにいたってまだ姿を判明させていないのは、そうと思わせてのフェイクをかけるつもりでしょうか。そして彼(彼女)の見せたスタンド能力、蜂の巣に触れると、それが擬音の書き込まれた人型に変形して動き回っています。
Dio「おい…何だこれは…?そこの蜂の巣をどうした?何が起こっている」
使者「簡単なことよ。あの蜂の巣、スタンドの力で動いている」

ルーシーがジャイロたちと、Dioが大統領と手を組み、対立が明確になってきたスティール・ボール・ラン・レースのもう一つの戦い、この先どうなるのか、あちきも少し興味が出てきたでありんすよ 。


うお、まぶし
爪弾を喰らえ〜


2006/6/27


スティール・ボール・ラン感想(#15 緑色の小さな墓標B)

お互い譲らぬレースを続けるジャイロとDio、しかしジャイロもDioも熾烈な争いの中、それぞれの馬に疲労が見え始めています。そして体力を温存させているジョニィがその二人に詰め寄り始めます。
当然のようにレースでの戦いを続けている三人ですが、よくよく考えるとちょっと変わった状況であることが分かるでしょう。今の三人の第一の目的は、先に聖人の遺体のある場所に到着してそれを手に入れることですが、コンマ数秒の差を争うレースをしているわけではありません。相手よりも早く馬を走らせなければならない理由はなく、邪魔者を排除するためにスタンド能力を使った格闘戦に持ち込んでもいいはずです。
すでにDioは「恐竜(スケアリーモンスター)」の能力に十分な自信を持っており、あらかじめジャイロとジョニィに警告していたように、格闘戦で二人を相手にしても倒せる自信を持っています。しかし、それでありながらDioはレースでの戦いに持ち込みました。わざわざDioがレースでの戦いにこだわったのは、ジャイロとジョニィに遺体の奪取戦という点においてだけでなく、レース(スティール・ボール・ラン・レース)においても二人は自分には勝つことができないということを思い知らせるためでもあるのです。ジャイロはDioを「完膚なきまでに『ヤツをたたき潰す』」と言っていましたが、それはDioの方にしても同じことで、この小レースでの勝利はどちらが「上であるか」を決定づけるものでもあるのです。

とはいえ、レースでの決着にこだわりはすれど、その勝つための手段は選ばないのがDioです。「恐竜」の能力を使用してジャイロの馬への妨害を仕掛けます。
馬の走行での勝負では互角以上に持ち込んでいたジャイロですが、その次の手を考えるところ、次にDioが何かを仕掛けてくるところにまでは考えが及んでいません。しかし、ジョニィがそこに気づきます。「タスク」でDioへ攻撃を仕掛けるジョニィ、このレース勝負の均衡を破ったのは彼でした。
ジョニィを捕らえ、ジャイロが攻撃の仕草を見せた瞬間に勝ち誇るDio。
Dio「勝ったッ!!レースもッ!次の「遺体」もッ!」
この台詞から、Dioがレースでの勝敗と、遺体の奪い合いの勝敗を分けて考えていることが分かります。ジョニィとジャイロがレースでの勝負を放棄した時点で、彼にとってはレースでの勝利は自分のものになったと考えたのでしょう。
しかし、Dioの予想に反して、遺体の奪い合い、格闘戦の勝利はDioのものとはなりませんでした。

ジャイロの突然のジョニィへの怒り、これはジョニィの行動がレースでの敗北の原因となってしまったと考えてのことでしょう。ジャイロにとっての『完膚なきまでに勝つ』こととは、レースと遺体の奪い合いの二つに勝利することなのですから。結局、レースでの勝利はDio、遺体の奪い合いではジャイロたちに軍配が上がったことになります。この勝負は一勝一敗のイーブンになっただけなのです。
しかし、Dioがジャイロの馬に妨害を仕掛けていたことは確かで、ジョニィの介入がなくてもレースでの勝ちはDioに持って行かれていたでしょう。やはりジャイロにはまだ「何か」が足りないことになります。


Dioを振り切ったジャイロとジョニィ、そこへブラックモアの手から逃げてきたルーシーが現れます。しかしルーシーはますます14歳には見えなくなってきますね。そういえば、ジョジョ5部でギャングのボスにまで上り詰めたあの男、歴代ジョジョ一の鬼畜男こと、ジョルノ・ジョバァーナもあれでたった一つ上の15歳でしたね。その一方、中学生くらいに見えるナランチャが実は17歳。荒木世界では精神年齢がそのまま外見年齢に影響してくることが多いです。
ところでルーシーからの情報を手に入れたことで、ジャイロとジョニィはようやく自分たちの真の敵を知ることになりますね。今までは漠然とジャイロの祖国へのテロリストとしか考えていませんでしたが、これで自分たちが戦おうとしている相手がこの国の大統領であることを知るわけです。

Dioとの戦いが終わったのも束の間、今度はブラックモアとの戦いが始まります。雨の日限定の能力とはいえ、これまでのスタンド使いの中では最強クラスの強さだと思います。ところでブラックモアの能力ですが、「雨粒の固定」と「自身の雨との融合」と二つのアクションを見せましたが、一つの能力として説明するにはこれってどう定義したものでしょうかね。

ブラックモアを撃破した二人。遺体の脊椎部分はジョニィのものとなりました。遺体の脊椎部分が自分で動いてジョニィの体内にズルリと潜り込んでいくのはちょっとホラーチック。これまでに聖人の遺体を手に入れたジョニィ、ジャイロ、Dioは、それぞれスタンド能力を手に入れていますが、二つ目の遺体を手に入れたのはジョニィが初めてです。遺体を二つ以上持つことがどういう変化をもたらすのかが気になるところです。
「スタンド能力は一人一能力の原則」を考えると、ジョニィの「タスク」の能力がパワーアップするのが妥当なところでしょうか。今までは爪弾だけでしたが、今度は爪とは限らず歯や鼻毛が回転して飛ぶのかもしれません。なんかそれをやった時点でこの物語の主人公たる資格を失いそうですが。
ところで、『スティール・ボール・ラン』におけるスタンド能力は、ジョジョ4〜5部での「矢」によるスタンド能力の発現とは違い、遺体はスタンドの才能のある人間から能力を「引き出す」のではなく、遺体自体の力で能力を「付加」しています。6部のホワイトスネイクのDISCに近いですね。しかし、Dioのように、「恐竜」という、もともと別のスタンド使いの能力だったものを自分のスタンド能力にしてしまう例は珍しいんじゃないでしょうか。さらに言えば、フェルディナンドは自分自身を恐竜化することまではできず、Dioのスタンド能力はそれをさらに上回るものとなっています。Dioのスタンド能力までもが、「お前のものは俺のもの、俺のものは俺のもの」という、ディオニズムに溢れています。


2006/5/28


スティール・ボール・ラン感想(#14 緑色の小さな墓標A)

ついにブラックモアに捕まったルーシー、為す術もなく聖人の遺体を奪われてしまいます。そしてルーシーに「この「面」が見えますか?」と問いつめるブラックモア。しかしスタンド使いではない彼女にはブラックモアのスタンドは見えていません。何のことを言っているのかも理解できていない様子です。それを見て取ってブラックモア、「ならばこの「包み」を持ったとしても……おまえは「スタンド使い」にはなれない」と言います。
どうやらジョジョ3部〜6部における「スタンド」と、『STEEL BALL RUN』の世界における「スタンド」には若干の差違があるようですね。
前者のスタンドは、そのスタンドビジョンもスタンド使いでないと見ることができませんでしたが(※『力』や『クヌム神』のような例外をのぞく)、後者のスタンドは、スタンドの素質を持つ人間であればまだスタンド能力に目覚めていなくても見ることができるようです。
そういえばジャイロも、聖人の眼球を手に入れてスタンド能力を身につける前にもブンブーン一家のスタンドビジョンが見えていたことがありましたね。
マウンテン・ティムやフェルディナンドのようにスタンドビジョンの現れないスタンド使いもいましたし、必ずスタンドビジョンは登場させていたジョジョ3部の頃のスタンドと比べると、「超能力の具現化、本体の分身」として描いていたスタンドが「純粋な超能力、特殊能力」として描かれるようになっていると思われます。
ジョジョのスタンドバトルでは定番の、「オラオラ」や「無駄無駄」のラッシュのような戦闘描写、さらに言えば、スタンド(ビジョン)同士の殴り合いもこの『STEEL BALL RUN』ではなくなっていることを考えても、荒木先生がスタンド能力を本来の超能力に近いものとして描こうとしていることが見て取れます。

さて、スタンドの素質を持っていなかったルーシー、ブラックモアはスタンド使い以外は自分の「管轄外」と、後の処置を大統領に任せることにします。一応ルーシーはスティール・ボール・ラン・レースの主催者の妻であり、重要人物であるわけですから、もはや自分の驚異たり得ないことがわかればあえて手を下すことは避けたいところなのでしょう。
命拾いこそしたルーシーでしたが、最悪の状況は何も変わっていません。まあしかし、前世での世界だったら、彼女にスタンドの素質があるかどうかを調べるには「矢」で彼女を打ち抜かないといけなかったわけで、「アタリ」なら生き残れますが、「ハズレ」だったら死んでいたわけです。遺体に触れていただけで「アタリ」「ハズレ」がわかったことは運がよかったのかもしれません。スタンドの素質の検査に非破壊検査の技術が導入されたことは喜んでよかったのでしょう。

あらためて遺体の「脊椎」を見て急に遺体を自分のものにしたいという欲望にかられるブラックモア。今にも「Oh! My precious.(おお〜!いとしいしと〜)」と言い出しそうな魅了のされ方です。
しかしその興奮も束の間、ルーシーの予想外の反撃を受けます。これまでスタンド使い相手には拳銃など通用しないというのが当たり前でしたが、隙さえつけばスタンドがあろうと意味はなかったのです。先月号の『天上天下』じゃありませんが、ブラックモアも能力で身を守っていなければ銃弾一発で殺せる「ただの人」なのです。
しかしこのルーシー・スティール、14歳で結婚し、さらに初めて人を撃ち殺したのも14歳と、15で盗んだバイクで走り出した尾崎豊以上にハードな人生を送っています。
遺体を取り返したルーシー、そしてまだかろうじて生きながらえ、自分を戒め、ヴァニア・アイスのような執念を持って追いかけるブラックモア…

一方、ジャイロたちはDioをその視界にとらえます。Dioを前にして、「この前のSTAGEの時おまえは…オレはあのDioに決してレースでは勝てないと予告した…今はどうだ?どう思う!?」とジョニィに尋ねるジャイロ。
ジョニィに敗北を予告されたこと、そして実際にその通りになってしまったことをジャイロはかなり引きずっているようです。今までの言動からしても、彼はかなり根に持つタイプのようなので、Dioに完全勝利を決めるまではいつまでもジョニィにあの時のことを言い続けそうです。
Dioに攻撃を仕掛けるジャイロとジョニィ、いざDioとのスタンドバトルが始まるかと思いきや、実際にはレース勝負が始まります。この突然のレースの展開は意外でしたがグッときました。スタンドバトルの要素が入っても『STEEL BALL RUN』のメインの要素であるレースを忘れずにきっちりと入れてくれるのは嬉しいですね。

Dioの「ミス待ち」で勝つのではなく、完膚無きまでにDioを叩き潰すことを求めるジャイロ、「あいつに一〇〇年間は2度とオレに挑んで来たいと思わせないようなそういう勝ち方なんだ!」と独白します。たしかに前世ではこのDio、徹底的に叩き潰さないと、一度勝っても一〇〇年後には人の体を乗っ取って蘇ったりするような男でした。ここまで完全勝利にこだわるのは、もしかしたら前世での記憶が染みついているからなのかもしれません。
Dioを抜くために、いや、完全勝利するために自分とヴァルキリーだけのラインを探すジャイロ、彼はそこでリンゴォの言っていた「光」の道を見出そうとします。Dioも、ジョニィも、天候も嵐ももはやジャイロの目の中にはなく、そこにはただ「光」の道だけが……
でも道の向こうで死んだおじいちゃんが手を振っていたりしたらちょっと危険です。
『男の世界』にこそ真の勝利はあると言うジャイロ、「オレたちだけの「気持ちのいい道」」を探そうとします。
そしてジャイロがたどり着いたのは、Dioのライン上、彼のすぐ後ろでした。そしてDioの背後から馬をぶつけてくるジャイロ、そう、いわゆる「カマ掘り」です。
だめだジャイロ、そっちのには行っちゃ駄目だ。